AI for Accessibility
AI for Accessibility(AI4A)とは、障害者がAIを活用して情報を得るためのハードルを下げる考え方である。
前項で説明したように、現時点のAIは特化AIに留まっているため、AIのみでは100%の完璧な情報を得ることはできない。
しかし、自動化という考え方に基づいてある程度の割り切りをした上で情報を得る場合には、障害者の自立を考える面でも非常に有効である。
具体的には、以下のようなメリットが考えられる。
- 事前に手話通訳、介助を呼ばなくても良い
- 緊急時でも情報が得られる
- 支援をする側の負担が減る
例えば、Microsoftが公開しているSeeing AIでは、視覚障害者向け周囲情報確認をコンセプトに、スマートフォンのカメラが捉えた物、人、風景、テキストを音声で説明するアプリケーションである。
従来、視覚障害者に周囲の情報を伝えるためには、人を通して伝える必要があったが、"人によって伝え方が異なる"、"24時間常時伝えることは困難"という課題があった。このような課題に対し、AIを用いた支援は"伝え方が固定的"、"24時間常時利用可能"という利点がある。この結果、人間はより重要な場面に注力した支援が可能になる。
また、音声認識を活用した情報保障の例も増加傾向にある。例えば、4月からの大学等遠隔授業に関する取組状況共有サイバーシンポジウム『聴覚障害を持つ学生の支援方法とその応用』のようなPowerPointの音声認識機能を活用した情報保障や株式会社東芝 「会議・講演向け音声自動字幕システム」の開発について-高精度音声認識AIとリアルタイム字幕化技術によって、聴覚障がい者の業務サポート、生産性向上を実現-のように、高精度音声認識を活用した聴覚障害者の業務支援などの事例が報告されている。
このような事例においては高度なノウハウが必要だが、Web上には聴覚障害者のための講演・講義の音声認識による字幕付与のように公開されているノウハウもある。
もちろん、音声認識のみでは確実な情報が得られるわけではないため、聴覚障害学生の参加を支援するオンライン授業のあり方のような支援も必要となる。
以下は現在実用化されている AI4Aの一例をまとめたものである。
系統 | 技術 | 目的 |
---|---|---|
聴覚障害 | 音声認識 | 音声の内容を把握する |
合成音声 | 発音が難しい場合に、代わりにしゃべってもらう | |
視覚障害 | 画像認識 | 周囲の状況を把握する |
合成音声 | テキストを読み上げ、内容を理解する | |
言語障害 | 機械翻訳 | 自分の理解できる言語に変換する |